翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年07月06日
肝動脈塞栓療法と経皮的ラジオ波凝固療法

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

肝動脈塞栓療法(hepatic artery embolization therapy)は古くから切除不能の肝細胞癌に対する治療法で、血管撮影(angiography)検査の技術を応用した血管内治療の代表的なものです。この治療は、癌に酸素栄養を供給する動脈を塞栓することによって腫瘍を壊死させることを意図しており、よく兵糧攻めに例えられます。

まず足の付け根付近に局所麻酔を行い、カテーテルという細い管を動脈内に挿入していきます。目的とする肝臓の入り口まで達したら、カテーテルの中にさらに細いマイクロカテーテルを通し、癌を栄養する血管へと進めていきます。そして、抗癌剤と塞栓物質を注入しますが、その際に吐き気や腹痛が生じることが多く、また、治療後には38度を超える発熱が続くことがあるため、約1週間の入院が必要となります。

近年、血管撮影とCT検査を併用する血管撮影下CTが普及し、より正確な診断と治療ができるようになりました。

ラジオ波凝固療法では治療用の針を腫瘍へ刺し、針の先端部で発生する熱によって腫瘍を焼く治療で、主に肝癌の治療に用いられています。肝癌に対するラジオ波凝固療法は施設によって異なるものの、一般的に3cm以下、3個以下の肝癌が適応されています。

まず局所麻酔を行った後、超音波装置を用いて腫瘍へと針を刺し電気を流します。10〜15分の治療で約3cmの範囲を壊死させることができるので、3cm以下の腫瘍であれば、短時間で手術に匹敵する効果が期待できます。また、用いる針の太さは1mm程で、治療後の傷もほとんど残りません。ラジオ波凝固療法の適応は3cm以下と述べましたが、肝動脈塞栓術と併用することでさらに良好な知慮効果を得ることができるといわれており、3cm以上の肝癌であっても、単発であれば積極的に施行されるようになってきています。

針を刺すことによる出血や、周辺臓器の損傷、治療中の疼痛などが問題となる合併症ですが、超音波装置だけでなくCT装置を併用することで、より安全に、効果的な治療を行うことができると考えられています。

轄kエ翻訳事務所   医学翻訳・分子生物学翻訳・生化学翻訳担当:平井