翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2011年12月26日
進化について

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

「進化(evolution)の過程で不要なものは失われて、必要なものが残る」という表現に対しては、説明が必要になると思います。うっかりすると誤解を招くからです。この表現では「生物が不要と必要を自分で判断して、捨てるか残すかを決めている」と受け取られる恐れがありますが、全くそうではありません。「不要な者は失われて」という意味は、「不要なものがたまたま失われたとしても、そういう生き物は生き残ることができる。ひとたび失われた不要なものは復活することはまずない」ということです。一方、「必要なものが残る」という意味は、「必要なものがたまたま失われたら、その生物は生き残れない。そのため、それを失った生物は見つからない」という意味です。

時として、「陸へ上がりたい動物がいたから、陸へ上がってきた」、「空を飛びたい動物がいたから、翼ができた」かのように受け取れる表現を見かけますが、意思があればそのように変化するというわけではありません。自然科学(natural science)では、「膨大でランダムな遺伝子上の変異があって、変異の中で不適切なものを持った生物は生き残れず、環境に即して生存できたものが生き残った」という事象の膨大な繰り返しの結果であると、理解されています。将来は変更があるかもしれませんが、現状の理解はそういうことです。

「適者生存(survival of the fit)」という言葉もやや誤解を生みそうです。生き残るためには、よほど有利な条件である必要はなく、むしろよほど不適切でなければ、棲み分けを含めて生き残る可能性はあるというべきです。他方、よほど有利に生きていた生物でも、ちょっとした偶然ともいうべき隕石の一撃で大きな気候変動が起これば、絶滅をすることだってあり得るのです。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井