翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年06月26日
沈降速度法と沈降平衡法の2つの測定法

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

超遠心分析機は、高速で回転させるローターに入れたセル内の溶質の濃度分布をリアルタイムでモニターできる機械で、沈殿速度法と沈降平衡法の2つの測定法があります。水溶液中の翻訳済みタンパク質の均一性、分子量と大まかな形状がわかります。これにより、ゲルろ過と違って、より正確な分子量が求められるだけでなく、分子の形によらない絶対分子量が求められます。また、ゲルろ過のような担体を用いないので、非特異的な弱い相互作用によって分子量が実際より小さく見積もられたりする心配がありません。

沈殿速度法では高速でローターを回転させます。この場合、すでに溶質が沈降してしまって溶質がなくなった部分と、まだ溶質の存在する領域との間に移動境界面ができるので、この界面の沈降速度と形状の変化を観測します。この移動境界面の形状と経時変化には成分の均一性、沈降係数、分子量など多くの情報が含まれます。

最近では、実験データに理論式を直接当てはめて沈降係数や分子量を求めることができるようになり、オリゴマーの解離会合の速度定数も見積もれるようになりました。また、沈降速度法では、得られる摩擦係数と分子量から、分子が丸いタンパク質か細長いタンパク質かなどもわかります。

沈降平衡法ではローターを比較的低い回転数で回転させ、沈降と拡散が釣り合って平衡に達したときの濃度分布を記録します。溶質が均一な場合には、縦軸に濃度の対数をとり、横軸に回転中心からの距離の自乗をとると直線になり、その傾きから溶質の分子量、または不均一な溶質の場合にはその点における重量平均分子量が得られます。中心からの距離が大きいほど濃度が高くなるので、1回の実験で比較的広い濃度範囲の分子量を調べることができ、たとえば、単量体と2量体が平衡にあれば、その平衡定数が決定できます。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井