翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年05月29日
赤外線カメラと全身サーモグラフィ

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

テレビコマーシャルなどにもよく登場するサーモグラフィ(thermography)は、皮膚などの温度が上昇すると、映し出された映像も赤くなって見えるというわかりやすい検査法です。原理も比較的単純で、皮膚から発せられる赤外線(infrared ray)をセンサーでとらえて、カラー画像に変換するというものです。

赤外線は分子の熱運動に伴って放射される電磁波の1つで、ヒトの皮膚表面からも絶えず出ています。このエネルギーを検出するセンサーには、いろいろなタイプがあります。最近、多くの製品で使われているのは、赤外線を吸収すると電気抵抗が変化するという物質(シリコンの一種)です。このようなタイプのセンサーを抵抗型素子(ボロメータ:bolometer)といいます。

従来は熱映像を取り込むために、被写体をいったん鏡に反射させ、それを機械的にスキャンニングしてデジタル化するという方式がとられていました。そのため装置も大変に大掛かりなものでした。しかも温度を補正するために、液体窒素を検査のたびに装置に注入しなければならないという不便さもありました。

最近、この2つの問題をいっきに解決した新方式が登場し、サーモグラフィも新しい時代に入りました。その新方式を非冷却型二次元センサーといいます。小型化が進み、呼び名も「サーモグラフィ装置」から「赤外線カメラ」へと変わりつつあります。

医療では、動脈硬化症による血流障害、神経の異常、皮膚疾患、がんなどの診断に広く応用が試みられてきました。ただし、サーモグラフィで得られる画像は皮膚のごく表層の温度を表しているに過ぎず、外気温や精神状態によって簡単に変化してしまいます。そのため、必ずしもさまざまな病気の診断ができるとは限りません。最近は、「サーモグラフィには科学的根拠がない」という意見も多く、医療用としてはあまり使われなくなってきました。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井