翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
生物学・分子生物学・バイオ技術コラム一覧へ戻る

2012年04月23日
薬の特許期間はどのように決められているのか

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

特許制度を簡単にいうと、「新しい物質や技術の発明者にそれらの使用を一定期間独占させ、研究開発に使った費用を回収する機会を保証する制度」となります。費用が回収できれば次のステップへの再投資が可能となり、技術はさらに発展することになるため、これが特許法の目的といえます。

薬の特許は、以前は作り方だけで認められていました。つまり製法特許です。しかし、同じ薬でも作り方は何種類もあるのが普通なので、しばらくすると、違う製法の同じ薬がゾロゾロ出てきます。このゾロ製品は製法の違いだけを考えればよいので、開発費用はわずかで済みます。これでは誰も巨費を投じて薬を開発する気にはなりません。

そこで1967年から、薬そのものに特許が認められるようになりました。これが物質特許で、現在の薬の特許は物質特許や製法特許のほかに、用途や製剤に関するものもあり、その期間は出願から20年とされています。

薬以外の物質の場合は、特許が登録されるとその権利はただちに成立し、期間が満了するまで継続されます。ところが、薬の場合は事情が異なり、厚生労働省が有効性と安全性を確認するため、製造販売承認を出すまでに時間がかかります。その間は、その薬を作ることも売ることもできません。つまり、特許上の権利を行使できないことになります。厚生労働省に治験届を提出してから製造販売承認を得るまで、少なくとも7〜8年はかかるので、薬の特許上の権利が大幅に制限されます。

同様の事情を抱えていた米国では、1984年に特許回復法案が成立し、薬の販売承認日から5年を限度として、開発期間中に失われた有効期限の回復を認めています。

日本でも1988年から、特許登録の日から製造販売承認されるまでの長さ(侵食期間)に応じて、特許の有効期間が延長、または回復(回復期間)されています。

回復期間は原則として侵食期間と同じ長さですが、最長5年を限度とし、侵食期間が2年未満または残存期間が6ヶ月未満の場合は認められないことになっています 。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井