翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年03月26日
テーラーメイド医療、オーダーメイド医療

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

各人のSNP(一塩基多型:Single Nucleotide Polymorphism)の特徴がわかれば、それに応じた適切な応急処置や治療方法を計画することができます。具体的には、適切な食事療法や運動療法を支持して発症を抑えたり、最も有効な薬を選択、投与して治療したりすることが可能になります。これは、「注文服を作る」という意味からオーダーメイド医療あるいはテーラーメイド医療と呼ばれ、大きな期待をもたれています。

たとえば、イレッサ(Iressa)という制癌剤があります。ちょっと背景から説明すると、正常な体内にはEGF(上皮成長因子:Epidermal Growth Factor)という増殖因子が微量に存在していて、細胞膜にある受容体タンパク質(EGFR)に結合して作用を現します。癌細胞の多くはこのEGFRをたくさん作るため、EGFがよく反応して増殖が盛んになります。ところが、EGFR遺伝子は患者によってSNPの違いがあり、そのために効果や副作用に個人差があることがわかりました。あらかじめ患者のSNPを調べておけば、有効な患者や副作用が出そうな患者の見当をつけることができます。

同様に、イリノテカン(irinotecan)という制癌剤は、DNA複製(DNA replication)のところで働くトポイソメラーゼ(topoisomerase)の阻害剤(inhibitor)で、大腸癌などに対してなかなか有効な薬ですが、まれに患者が死に至る大きな副作用が出ることがあります。しかし、副作用の強い患者には、イリノテカンの代謝酵素(irinotecan metabolizing enzyme)のSNPに特徴があることがわかり、事前にこれを調べて使用を判断するようになりました。最近では、「治療に必要な薬ではあるが、致死的な副作用が出る恐れがある」という場合、使用禁止にするのではなく、患者のSNPを調べてから使うということが可能になりました。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井