翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2011年12月19日
原生動物について

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

淡水(fresh water)にすむ原生動物(protozoan)を大きく分けると、アメーバ(ameba)や大腸菌(colon bacillus)の仲間、鞭毛虫(flagellate)の仲間、繊毛虫(ciliate)の仲間に分けられます。原生動物は単細胞の生物で、膜に包まれた核をもっています。原生動物とワムシやミジンコなどの多細胞生物の違いは、原生動物は卵を産まないことと、消化管などの器官をもたないことにあります。原生動物はエサを食胞(food vacuole)と呼ばれる袋に取り込みます。

原生動物の分類には不明なことが多く、分子生物学の発達や電子顕微鏡の技術的発展によって、その分類体系が次々と変わってきています。

原生動物の仲間は川や湖だけでなく、水溜りや土の中にも棲んでいます。しかし、その多くがとても小さいため、顕微鏡を使っても見落とされがちです。湖やその周辺にもさまざまな原生動物が棲んでいます。

これまで池や湖の中の物質の流れは、次のように考えられていました。植物プランクトンが太陽の光を浴びて増え、それをミジンコなどの動物プランクトンが食べ、この動物プランクトンを小さい魚がエサにし、さらに大きな魚や鳥に食べられるという食物連鎖の考え方が主流でした。しかし、最近では陸上から水中に流れ込む有機物や植物プランクトン、他の生物が放出する有機物、あるいはさまざまな生物の死骸を細菌が食べ、その細菌を鞭毛虫や小型の繊毛虫などの原生動物が食べ、この原生動物をさらに大きな動物プランクトンが食べるといった、微生物食物網の考え方が主流となってきました。水域によっては植物プランクトンを出発点とする食物網よりも、細菌を出発点とする食物網のほうがより重要な役割を果たしていることもわかってきました。

この食物網の一部であるアメーバについてですが、これは人間と同じように基本的には時間とともに歳をとり、いずれは死んでいきます。繊毛虫の中間はある程度分裂を繰り返すと、接合(conjugation)と呼ばれる行動をします。2匹の繊毛虫が接合によって、お互いの遺伝情報を交換し、若返りをはかるのです。面白いことに、アメーバの中間の多くは接合しません。何回分裂を繰り返しても、同じアメーバがずっと行き続けています。何百年、何千年も行き続けているのかもしれません。アメーバを研究することによって歳をとらないための薬が開発されるかもしれません。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井