翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年03月06日
原文からタンパク質を翻訳するしくみ

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

細胞内の翻訳会社「リボソーム」は必要に応じてタンパク質を何度も作らなければなりません。そのためにタンパク質の原文は大切に保管しており、必要に応じてそれをコピーし、翻訳会社に送るしくみになっています。原文の保管場所は核にあり、翻訳会社は細胞質にあります。

1つの細胞が2つに分裂する際は、DNAを複製してまったく同じものを2組作る必要があります。DNAはねじれた縄梯子のような絵で示されるように、二重らせん構造になっています。そして、各縄の上に並んだ4つの塩基が互いに結合することで、梯子の段が形成されています。それぞれの塩基は、アデニンはチミンのみ、グアニンはシトシンのみという決まった相手としか結合しません。これにより、塩基配列をネガとするとネガとポジの関係のように、あるいは塩基を凸凹のある形とするとその鋳型のように、その配列を正確に写し取ることができるわけです。DNAを複製するときは、2本を2つの1本鎖に分け、それぞれのDNAの塩基に対して、カードを会わせるように順番に塩基を並べて組み合わせます。こうして確実に同じものが2本作られるのです。

細胞ではDNAに書かれた原文を読み取って、タンパク質が翻訳されています。DNAは核内にありますが、タンパク質の翻訳会社は細胞質にあります。まず、DNAの原文がRNAに写し取られます。RNAも当然、4つの塩基が直線的に配列しています。DNAは大量の原文を含む長い構造ですが、RNAは通常、1つのタンパク質の翻訳部分を写し取る短い1本鎖です。DNAの原文にはタンパク質情報の「始まり」と「終わり」を示すコドンもちゃんと含まれていて、メッセンジャーとなるRNAはこの間の塩基配列をコピーするのです。

原文を読み取ったmRNAは、次に核から細胞質へ移動します。細胞質ではコドンで規定されたアミノ酸を荷台に積んだRNAが待ち構えています。そして、mRNAが写し取った原文とマッチするtRNAがカード合わせのように手を結んで、アミノ酸が連続してつながっていきます。こうして目的のタンパク質が作られるわけです。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井