翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年02月27日
医療および医学界で論議を巻き起こしている代理出産について

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

通常、女性が子供を産むときには、お腹に自分の血を引き継いでいるわが子を宿し、出産します。しかし、血のつながりが全くない子どもを産むことも現在では技術的に可能になりました。それには以下の4つの方法があります。

  • 母親の卵子と父親の精子の受精した受精卵(fertilized eggs)を、ほかの女性の胎内(womb)に入れ、出産。
  • 母親の卵子とほかの男性の精子を受精した受精卵を、ほかの女性の胎内に入れ、出産。
  • 父親の精子とほかの女性の卵子を受精した受精卵を、更に別の女性の胎内に入れ、出産。
  • 夫婦以外の人から提供された精子と卵子を受精させた受精卵を、ほかの女性の胎内に入れ、出産。

これらすべては代理出産(surrogate delivery)あるいは代理母出産とよばれ、出産をする女性を代理母(surrogate mother)と呼びます。また、代理母の卵子と父親の精子を体外で受精させ、その受精卵を代理母の胎内に入れて出産する場合も代理出産にあたり、この場合、代理母は子どもと血のつながりがあります。これらの手法は子どもを望む夫婦の母体が正常に妊娠、出産することができない場合、子どもを手にする切実な手段となります。

妊娠、出産は女性にとって命をかけた一大行事です。そのため代理母には生死に関わるリスクが課されることになります。また、代理母が妊娠したときには、赤ん坊の染色体異常の有無を調べるための羊水検査が義務付けられており、生まれる前から生命の選別をしている、との批判があります。

また、子どもを身ごもることで代理母に母性本能が宿り、生まれた子どもを手放したくなくなることもあります。アメリカで起こった「ベビーM事件」はその顕著な例です。

このように、代理出産には倫理的問題がつきまとい、日本ではまだ認可されていません。子どもを望む夫婦の権利を国が規制するのはおかしいという意見や、出産を望めどそれが叶わない女性を命がけで助けたいと、自主的に代理母を申し出る女性を、一部の倫理観や法律が規制するのは間違っているとの見方、羊水検査についても母体の安全確保のためにはやむをえないとの意見もあり、論争は激化するばかりです。そんななか、日本国内でも子どもを産めない娘の代わりに、その母親が代理母となった例があり、代理母と依頼夫婦が家族間ならいいのか、それとも逆に、家族間だからこそ依頼が断りにくくなり、代理母になる意思決定を共用する状況に陥るのではないか、などの新たな議論ももち上がっています。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井