翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年02月22日
恐い!!劣化ウラン弾による健康被害が深刻化!?

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

湾岸戦争やイラク戦争でアメリカ軍が使用したとして問題となった劣化ウラン弾(depleted uranium ammunition)。いったい劣化ウラン弾とは何でしょう。また、なぜつくられたのでしょうか。

天然ウラン(natural uranium)は、ウラン235とウラン238およびウラン234で構成されていますウラン235は全体の0.72%としかなく、これが3〜4%になるように濃縮したものが濃縮ウラン(enriched uranium)で、おもに原子力発電所で使用されています。この濃縮の過程で大量のウラン238がごみとして排出されます。これが劣化ウランとよばれるものです。劣化ウランの比重は鉄の2.5倍、鉛の約1.7倍です。コップいっぱいの水が200gとすると、同じ体積のウランだと約4kgにもなります。

戦車の砲弾や弾頭には一般にタングステン合金(tungsten base alloy)が使用されています。劣化ウランはそれ自体が廃棄物であり、加工コストも安価ですむという利点があります。また、非常に重たい金属でもあるのでこれで砲弾をつくると、弾道が安定し標的への命中率が上がります。さらに非常に硬い金属でもあり、「重い」「硬い」の相乗効果で戦車の装甲板に対しても高い貫通力があります。

劣化ウラン弾は装甲版を貫通すると摩擦熱で溶けて液体金属となって飛び散り、同時に自然発火します。このときの燃焼温度は3000℃にまで昇ります。おまけに、劣化ウランは低レベルとはいえ放射性物質で、その半減期は45億年です。また、同時に化学毒性をもつ重金属でもあります。衝撃による燃焼で、このうち20〜70%が酸化ウランの微粒子となって大気中に飛散します。飛散した微粒子などを吸入などで体内に取り込んだ場合、内部被爆や化学毒性によるガン、重金属中毒(heavy metal poisoning)といった健康被害が問題視されています。もちろん飛散微粒子による周辺土壌の汚染も深刻です。劣化ウラン弾による子どもたちの健康被害は、湾岸戦争前に比べ白血病発症増加が顕著であり、3倍とも10倍ともいわれています。被害はこれだけでなく、湾岸戦争後に生まれた子どもたちには目や耳、鼻などの変形や欠損いった先天的障害が頻繁に現れています。

核兵器ではありませんが、放射背物質をあたりにまき散らす兵器は根本的にこれまでの兵器とは異なります。断固として使用を許してはなりません。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井