翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年02月22日
サイボーグ人間ができるかも?!生体材料“バイオマテリアル”

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

バイオマテリアル(biomaterial)とは「bio」と「material」とを組み合わせた造語であり、日本の医学界では生体材料とよばれています。たとえば、人工皮膚や人工心臓、人工関節から、身近なものでは手術系、コンタクトレンズ、虫歯の充填材(filling material)などもすべてバイオマテリアルです。私たちのからだは、体内に異物などが入ってくると炎症などの拒絶反応(adverse reaction)を起こすため、そうならないようにバイオマテリアルには以下の4種類の素材が使用されています。

天然高分子(natural polymer):軟骨(cartilage)などに多く含まれるコラーゲンや、食物繊維の主成分であるセルロースなどをいいます。これらはもともと生体に存在するものなので拒絶反応は少なめです。

合成高分子(synthetic polymer):石炭や石油などから人工的につくられます。身近なものでいえばスーパーのレジ袋に使用されるポリエチレンや、ペットボトルの原料となるポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)などがあります。これらは生体内にもともと存在しない物質なので、拒絶反応が起こる可能性があります。

セラミックス(ceramics):非金属無機材料、バイオミックス。生体内で溶けださない安定な素材のため、からだに優しいとされています。

金属:古くからバイオマテリアルとして使用されてきた、強度、可能性に優れた素材であり、紀元前から使用されていたという説もあります。しかし、生体内で溶け出しやすく溶けでたものがごく微量でも深刻なアレルギー反応を示すという難点があります。それを防ぐために合金化が進められており、ステンレス鋼(stainless steel)、チタン合金(titanium alloy)などが実用化されています。

バイオセラミックス材料としての水酸アパタイト(hydroxy apatite)がありますが、これは脊椎動物の歯や骨を構成する無機成分であることから、生体に悪影響を与えず、生体からも悪影響を受けません。また骨と結合しやすく、骨の形成が早く進むので、人口骨、人工歯根(インプラント)、歯磨き剤など医療用に多用されています。いち早く骨を再生および修復させるには、水酸アパタイトの中に生体組織が簡単に侵入できる必要があり、従来より気孔率を格段に高めた、多孔質の水酸アパタイトの医学的研究開発が広く行われています。

高齢社会の到来に伴い、骨粗しょう症(osteoporosis)、関節や歯の機能低下などの問題が深刻化します。健全な生活の維持と向上のためにもバイオマテリアルのさらなる研究開発に期待がかかります。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井