翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年02月09日
気になる血糖値、病気の信号を見逃すな!!

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

血糖とは、血液中に溶けているブドウ糖のことで、その濃度を血糖値といいます。ブドウ糖は、脳細胞をはじめ体中の細胞のエネルギー源として欠かせないものです。そのため、血液中には常に一定量のブドウ糖があり、全身に供給されています。その濃度は、空腹時でも食後でも変動しすぎないよう、ほぼ一定値を保つように調節されています。

この調節に重要な役割を果たすのが、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンというホルモンと肝臓です。インスリンはブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪細胞(adipocyte)に取り込ませ、血糖値を一定の範囲に保つ働きを持っています。

私たちが食事をとると、糖質は十二指腸(duodenum)で速やかにブドウ糖と果糖に分解され、それらは小腸から吸収されて門脈(portal vein)から肝臓に流れ込みます。すると肝臓のβ細胞からインスリンが分泌されて肝臓に流入し、その作用で、ブドウ糖は肝臓の細胞にグリコーゲンや脂肪となって蓄えられます。β細胞には、血糖値を感知すると速やかに適切な量のインスリンを分泌する機能が備わっているのです。肝臓を通り抜けたブドウ糖は心臓に行き、脳や筋肉などの細胞に運ばれてエネルギー源として使われます。また、取り込まれたブドウ糖は、インスリンの働きで筋肉細胞や脂肪細胞ではグリコーゲンや脂肪の形で蓄えられます。こうして食後一時的に上がった血糖値はしだいに下がっていきます。空腹時には肝臓がグリコーゲンや脂肪を必要に応じてブドウ糖につくり変えて全身に供給し、絶食(fasting)に対応します。食事によって血糖値が上がると、肝臓は糖の放出を中止して、血中のブドウ糖を取り込みます。こうした仕組みによって、血糖値は常に一定の範囲に維持されるようにコントロールされているのです。

しかし、インスリンがうまく分泌されなかったり、その作用が低下したりすると、ブドウ糖が筋肉細胞などにうまく取り込めなくなります。健康な人ではインスリンの分泌、肝臓からの糖放出の状態、肝臓や筋肉および脂肪細胞での糖の取り込み、すべてが食事による糖の流入にあわせて規則的に変化します。しかし糖尿病の人では、これら因子間の協調リズムが大きくくずれ、その結果、血糖値が一日中高いままになってしまいます。糖の流れが乱れ、血糖値が以上に高くなった状態が続くことを糖尿病といいます。

健康診断などで「血糖値が高い」「糖尿病の疑いがある」などと言われても、なんの異常も感じないために、他人事のように受け流している人も多いのではないでしょうか。しかし、血糖値の高い状態を放置していると、さまざまな病状を連鎖的に併発して、取り返しのつかないことになってしまいます。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井