翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年01月23日
真核生物の驚愕プロセス“スプライシング”とは?

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

真核生物におけるプロセシングでもっとも驚くべきことは、スプライシング(splicing)です。

真核生物の遺伝子は、アミノ酸の配列情報をもったエキソン部分と、それをもたないイントロン部分とからなり、pre-mRNAは両方を含んだ形で一続きに合成されます。転写されたpre-mRNAからイントロン部分のみを切り取って除去し、エキソン部分のみをつなげてmRNAにするのがスプライシングです。すごい反応をやるものだと思います。イントロンを除去して遠く離れた2つのエキソンをつなぐには、非翻訳RNAであるsnRNA(small nuclear RNA)を含む複合体が、pre-mRNAにおける2つの切断点近傍と結合することで、2つの切断点を引き寄せると考えられます。2つの切断点を切り、そこをつなげ合わせるところでsnRNAという小さなRNAが働いているわけです。スプライシングの過程では、わざといくつかのイントロンが除去されずに残されたり、あるいは、間にエキソンを含んだ2つのイントロンが除去されたりした結果、完成品として複数種類のmRNAができる場合があります。これを選択的スプライシングといいます。イントロンが除去されずに残された場合には、その部分もアミノ酸配列情報として使われます。そして、その部分から後ろは全く異なったアミノ酸配列によって、翻訳会社がタンパク質を合成できることになります。

結果として、そのような複数種類のmRNAからは、アミノ酸配列の異なる複数種類のタンパク質が合成され、翻訳会社を通過した各タンパク質は異なった機能を持つことになります。同じ細胞の中で複数種類のmRNAができて、複数種類のタンパク質が翻訳される場合もあります。また、体内の別の組織の細胞で、組織によって異なる種類のmRNAが合成され、異なるタンパク質が翻訳会社によって合成される場合もあります。あるいは、同じ組織の細胞でも、ずっと若い胚の細胞と、生まれた後の細胞とで選択的スプライシングが起きて、異なるmRNAを持つことがあります。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井