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医学・薬事申請に関する翻訳

医学・薬事申請に関する翻訳Creating a worldwide knowledge network

<薬事・臨床試験>

医療の進歩が著しい今日、一日も早く世界の最先端の医療技術の恩恵にあずかりたいと多くの日本の患者さんが願っています。

日本国内で医療機器を販売する際、そのリスク分類に応じて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による承認や第三者認証機関からの認証を受けたり、管轄の都道府県へ届出を行うなどの所定の手続きを行います。さらに、より多くの患者さんがその医療機器の恩恵を受けられるようにするには、保険適用申請を行って、日本の健康保険の適用対象とする必要があります。
日本ではこれらの手続きに要する時間が他国と比べて長いため、他国では既に治療に使用されている医療機器が日本ではまだ使用することができないことも多いのが現状です。ここ数年で、この海外との時間的な差(デバイスラグ)に対する一般の人々の関心も高まり、規制当局は具体的な数値目標を定めて審査体制の整備を進め、当局側のタイムクロックの短縮を図ってきました。

また、これらの手続きは申請者と当局とのキャッチボールのようなものですので、審査の迅速化には当局側だけでなく申請者(医療機器の製造販売業者など)側の対応もとても重要です。より完成度の高い薬事申請書類を提出することによって、審査がスムーズになります。さらに、当局からの照会事項等への迅速かつ的確な対応などの努力による申請者側のタイムクロックの短縮も強く求められています。

ペースメーカ、植込み型除細動器(ICD)、ステントグラフト、人工血管等の循環器系医療機器など、多くの医療機器が海外で製造されています。外国製の医療機器を日本で製造販売する際には、海外で実施された非臨床試験や臨床試験の報告書、取扱説明書、添付文書、製造所に関する資料、STED、医学文献など膨大な量の文書の翻訳が必要となります。

また、グローバルハーモナイゼーションが推進される中で、日本を含む複数の国で同時に行う国際共同治験にも国内外から大きな期待が寄せられており、前臨床試験の報告書、治験実施計画書(プロトコール)、症例報告書(CRF)、被験者からインフォームドコンセントを取得するための同意説明文書、治験機器概要書、治験実施施設との契約に関する書類、不具合報告書、治験審査委員会(IRB)に関する資料、監査報告書、治験総括報告書などの治験関連文書の翻訳のニーズも高まっています。

日本の医療の質のさらなる向上に向けて絶えず法令が改正されており、行政側と申請者側の双方がデバイスラグ解消に向けた模索を続ける中で、限られた時間枠内で申請業務や臨床試験関連業務に携わる皆さまを、読み手が理解しやすく、曖昧さの残らない明確な「説得力のある翻訳」を提供することによってサポートしていきたいと考えております。

そのためには、正確で読みやすい訳文という基本を踏まえ、文書の読み手、文書の目的、関連する他の文書との関係まで理解した上での翻訳が必須であると考えます。
例えば、医療機器の製造販売承認申請書の添付資料であれば、必ずしも医学専門家ではない方を含む複数名のチーム体制で審査を行う担当者(読み手)に向けて、当該医療機器の有効性と安全性および性能を示し、承認されるべき医療機器であることを納得して頂く(目的)ため、承認申請書の記載内容を裏付ける資料として(関連する他の文書との関係)、承認申請書全体と整合性のある文書として翻訳することが不可欠です。資料の量の膨大さや時間的制約のため複数の翻訳者が手分けをして訳すことが多くなりがちで、一つの原語に対する訳語がばらばらになり、読み手の混乱や誤解を招き、結果的に審査の所要時間が長くなることが多々あります。訳語の統一や文書間の整合性を徹底することで、このような時間の浪費は回避することができます。

さらに、外国の製造業者と連携して申請資料を作成する場合は、英文資料の和訳のみでなく、日本の法令や当局からの照会事項を英訳して説明しなければならない機会も多いことと思います。それぞれ自国の規制をベースに理解しようとするため、日本独自の薬事法令や慣習について理解して頂くのは容易ではなく、このプロセスに疲れて妥協して先に進めてしまい、後になって対応を迫られて作業が増えることも少なくありません。外国と日本の薬事行政の違いを認識した上で、理解しようとする方の立場に立って英訳することによって、この理解を促すプロセスをサポートしています。

弊社では、翻訳の全般的な技能を高める日々の努力はもちろんのこと、定期的に講習会に参加したり現場の担当者からお話を伺ったりして最新の関連法令や薬事動向に関する理解を深め、薬事申請・臨床試験業務担当者の視点から、法令と当局のニーズに応えることのできる、「単なる直訳的翻訳」ではない説得力のある翻訳を常に心がけております。

この翻訳分野の専任者からのごあいさつ

Y.O医学・薬事申請翻訳担当のY.Oです。

医療機器メーカーで薬事申請や治験業務に従事した経験を生かし、現場の申請・治験業務担当者がどれほど厳しい状況の中で即戦力となる翻訳を求めているかを身をもって知っている者として、当局に納得して頂ける完成度の高い正確な訳文をお届けすべく、医療分野や薬事動向に常に目を向け、現場の皆さまのお声を聞かせて頂いております。
また、大学時代に身につけた言語学的な分析手法や翻訳・編集業務の経験も生かし、用語の整合性がとれた、曖昧さのない的確でわかりやすい訳文になっているかどうか、客観的かつ批判的に多方向からのチェックを行い、すぐにご活用頂ける最善の状態で納品できるよう常に心がけています。(Y.O.)
→Y.O.が担当する「医学・薬事申請コラム」はこちら

過去の翻訳例のご紹介

<承認申請関連書類の翻訳>

  • ペースメーカ、植込み型除細動器、カテーテル、ステント、人工関節、骨接合材料等の承認申請用書類(前臨床試験、海外での臨床試験、STED、添付資料など)の和訳
  • 510(k)に関する文書の和訳
    医療機器の治験実施計画書、症例報告書、同意説明文書、治験総括報告書などの治験関連文書の英訳・和訳(国内治験、海外の治験、国際共同治験など)
  • 規制当局からの照会事項の英訳およびそれに対する外国製造業者からの回答(英文)の和訳
  • 新医療機器の審査報告書の英訳
  • 海外の製造所の監査報告書の和訳
  • PMDAとの事前面談用資料の英訳・和訳
  • 本社のチェックに供するためのPMDAに提出予定の承認申請書類(案)の英訳、およびそれに対する本社からの修正指示の和訳と反映
  • PMDAでのプレゼンテーション用資料の和訳
  • 標準業務手順書の英訳・和訳

<市販後に使用する文書の翻訳>

  • 人工心臓弁の臨床経験報告書の和訳
  • 人工血管、人工肺、自己血回収装置のカタログの和訳
  • 医療機器の不具合報告書の英訳・和訳

<法令や医学論文等の翻訳>

  • 国内外の薬事関連法令の英訳・和訳
  • 経口投与薬剤のWarning Letterの和訳
  • 精神医学に関する医学論文の英訳・和訳
  • 分娩法に関する医学論文の和訳
  • 海外の医療事情に関する冊子の和訳
  • 整形外科分野の学会誌のAbstractの和訳
  • 日本における介護の現状に関する論文の和訳
  • 幼児教育に関する論文の英訳

翻訳例

翻訳 ケース1

原文

「新医療機器」とは、既に製造販売承認若しくは認証を受けている医療機器と構造、原理、使用方法、効能又は効果、性能等が明らかに異なる医療機器をいう。
[薬食発第0216002号より抜粋]

注意点

この文を適切に訳すには、医療機器の承認/認証申請に関する基礎知識が必要です。
「製造販売承認を受けている」をそのまま訳すと「approved for manufacturing and marketing」となりますが、この場合の「製造」は訳出せず通常は「approved for marketing」と訳されています。
また、「効能又は効果」を直訳すると「efficacy or effects」などとなりますが、「効能又は効果」は製造販売承認/認証申請書に記載される事項の一つで、医療機器では「indications」が定訳になっているようですので、それに合わせます。
多種多様な専門用語が使用される法令の翻訳においては、単なる意味の訳出ではなく、定訳となっている表現や通常用いられている表現を使用することで、読み手の混乱や誤解を避けることができます。

わかりやすい訳

"New medical device" refers to a medical device whose structure, principle, usage method, indications, performance, etc. is clearly different from those of medical devices that have been already approved for marketing or certified.


翻訳 ケース2

原文

Physicians may not participate in a research study involving human subjects unless they are confident that the risks involved have been adequately assessed and can be satisfactorily managed. Physicians must immediately stop a study when the risks are found to outweigh the potential benefits or when there is conclusive proof of positive and beneficial results.
[Declaration of Helsinki(ヘルシンキ宣言)より抜粋]

注意点

「involving human subjects」を直訳すると「人間の被験者がかかわる」となりますが、「人間を対象とする」という表現の方が自然な訳になります。
また、「the risks involved have been adequately assessed and can be satisfactorily managed」の部分については、「リスクの十分な評価が(過去から現在までに)行われており、(それに基づいて現時点で)そのリスクを適切に管理できる」という時制にも注意して丁寧に訳すことが求められます。

わかりやすい訳

医師は、それに伴うリスクの十分な評価が行われており、そのリスクを適切に管理できるという確信がない限り、人間を対象とする調査研究に関与することはできない。そのリスクが潜在的な利益を上回ることが認められた場合や良好かつ有益な結果を示す決定的な証拠が得られた際は、医師は直ちに研究を中止しなければならない。


翻訳 ケース3

原文

医療機器は、接触時間によって「一時的接触」、「短・中期的接触」、「長期的接触」の三つのカテゴリーに分類される。

注意点

「一時的接触」、「短・中期的接触」、「長期的接触」の部分を文の間に入れて訳そうとすると読みにくい英文になってしまうため、これらを文の最後に「:」(コロン)を使って入れると簡潔な文になります。また、これらの用語は通知等で厳密に定義されている専門用語ですので、通常用いられている訳語を使い、同じ文書内や(複数の関連文書がある場合)文書間で一貫した訳語を用いる必要があります。

わかりやすい訳

Medical devices are classified into three categories in terms of contact duration: "limited contact," "prolonged contact," and "permanent contact."


翻訳 ケース4

原文

160 patients with cardiovascular disease were enrolled at 5 centers in Germany in this multicenter clinical trial.

問題点

「patients with cardiovascular disease」を直訳すると「心疾患を有する患者」ですが、「心疾患患者」と訳すと文章がすっきりして読みやすくなります。
また、「…were enrolled…」と受動態になっていますが、能動態にした方が日本語としてより自然な文章になります。
「clinical trial」を辞書で引くと、「臨床試験」「治験」など複数の用語が出てきますが、「臨床試験」と「治験」は同義ではなく(「治験」は「臨床試験」の一部)、それぞれ定義があるため、それを理解した上で用語を選択することが求められます。

わかりやすい訳

この多施設共同臨床試験には、ドイツの5施設で160名の心疾患患者を組み入れた。