翻訳家によるコラム:政治経済・アート・スポーツコラム

政治経済・アート・スポーツコラム by佐々木
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2012年08月07日
高校野球のあり方とは

こんにちは。轄kエ翻訳事務所でスポーツ分野の翻訳を担当している佐々木です。

今回のテーマは近年の高校野球についてです。

今年も高校野球の季節がやってきました。8月8日から夏の全国大会が始まり、甲子園球場では熱戦が繰り広げられています。しかし、都道府県予選で起きた出来事を受け、高校野球のあり方についてあらためて考えさせられました。

まずは高知県予選の決勝です。高知高校と明徳義塾高校の対戦では高知高校の4番打者が全打席で勝負を避けられ、2敬遠(intentional walk)を含む5四球。試合は2対1で明徳義塾高校が勝利を収め、甲子園出場を果たしました。明徳義塾高校と敬遠という2つのキーワードを聞いて、あの夏を思い出した方も多いのではないでしょうか。当時星稜高校だった松井秀喜選手に対して5連続敬遠をし、甲子園が騒然となった試合です。その当時も明徳義塾高校は同じ監督が指揮を執っていました。この作戦に関しては賛否両論がありますが、あまりにも勝利至上主義に偏りすぎている近年の高校野球を象徴する出来事であることは間違いありません。

もう1つは20年ぶりの甲子園出場を決めた広島工業高校。県予選の期間中に部員が強制わいせつ致傷(forcible indecency causing injury)容疑などで逮捕されましたが、事件を起こした部員は出場選手に登録されておらず、個人的な事件ということで出場継続が承認されました。その後、同部員が5月にも強制わいせつ事件を起こした疑いで再逮捕されましたが、日本高校野球連盟(Japan High School Baseball Federation)は甲子園出場には問題ないとしています。過去の事例と比較してみますと、在校生の暴力事件や部員の飲酒、喫煙で辞退した高校があるなかで、近年は連帯責任(collective responsibility)を問わない傾向にあります。やはり団体スポーツの野球でも個人化が進んでいるのでしょうか。むやみに出場を辞退させることは避けるべきですが、今回は部員が逮捕されている点を考慮すると、「個人的な事件」で済ませることはできないと思います。

当然、時代とともに高校野球のあり方は変わりますが、3年間しかない高校時代を野球に尽くした選手たちが悔いなく過ごせるよう、部員一人ひとりの立場を考慮した高校野球であり続けてほしいと思います。

轄kエ翻訳事務所 スポーツ翻訳担当:佐々木